指宿市 ユーファーム株式会社・木の匙 浦野敦さん、良美さん
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そもそものきっかけは、1998年に妻と二人でテントを背負ってハワイのカウアイ島を旅したこと。アウトドア派の僕たち夫婦は、山があって、海がきれいで、川でもカヤックが楽しめるその島が気に入り、本気で移住を考えた。ところが、そこはアメリカ合衆国。海外への移住は、色々な面でハードルが高かった。
そこで発想を変え、日本にも同じような島、つまり「山のある南の島」はないかと考え、辿りついたのが屋久島だった。当時は「世界自然遺産に登録された、どこか南の方にある島」といった認識しかなかったが、調べれば調べるほど、地形や気候など、カウアイ島との共通点が多く、一度も屋久島を訪れることはなく、「ここに住もう」とほとんど心に決めていたほど。
それから何度か屋久島を訪れ、やはり「ここだ」と確信し、移住。海・山・川・屋久島にはそのすべてが美しく、そして密接につながり合っている。それこそが、僕にとっての大きな魅力であり、移住を決定づけた最大の理由といえる。
我が子らの幼少期に自然豊かな地で暮らすこと、子育てをすることが大きな目的の一つであり、それが達成できたことは、僕たち一家にとってかけがえのない財産だと思っている。その結果、我が子らにとって、この屋久島が自慢できる素敵な「故郷」となってくれれば本望だ。豊かな自然と「島時間」に囲まれた日常は、都会のような余計なストレスもなく精神的に豊かである。
海も山も川も、その日の天気次第で思い立ったらすぐに行けることも、屋久島に暮らす大きなメリットといえる。また、自然だけでなく、「岳参り(=山岳信仰の現れのひとつ)」や「十五夜綱引き」など、伝統文化が脈々と受け継がれていて、それらに触れられることも、この島に暮らす大きな魅力のひとつといえる。
「郷に入っては郷に従え」という言葉があるが、まずは、そこに暮らしている人々、地域のしきたり、伝統や文化などを尊重し、それらを受け入れる姿勢が大事。それがあって初めて、移住者自身も地域に受け入れてもらえるのだと思う。
また、田舎は行事が多く、これらに積極的に参加することが地域に溶け込む早道でもある。移住者は、何年暮らしても所詮「よそ者」である。それはどうにもならない事実だが、決して悲観すべきことではない。「よそ者」には「よそ者」にしかない強みがあるわけで、それを地域に生かすべく努力すれば、地元の人も必要としてくれるはずだ。
せっかくそこに住むのなら、その地域にとって役立つ人材でありたい。そんな前向きな姿勢こそが、縁もゆかりもない地で有意義に暮らすための、大事な要素だと思う。