南九州市 – 加藤 潤さん
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そもそも、鹿児島が好きで、県外に出たくはなかったんですが、ITを活用した医療の仕事に就きたかったので、東京へ。電子カルテ事業のスキルを身に付けたら、3年でUターンするつもりで鹿児島を離れました。東京の暮らしはストレスフル。全く合わなかったですね。それでも、自分が「やりたい!」と、立ち上げた事業は軌道に乗せたいですし、採用にも携わっていたので、後輩を育てて、今やっている仕事が片付いたら…と思っているうちに、11年が過ぎていました。
退職願を出して、引き継ぎが終わるまでの半年間で、鹿児島での仕事や暮らし方について、調べてみようと動きました。そのとき見つけたのが、総務省の人材育成事業「ローカルベンチャースクール」。これは、地域おこし協力隊への応募を考えている人や、地方で暮らしたい・起業したいという人が対象の全7回のプログラム。ここでスキルを身につけながら、共に学ぶ20人の仲間もできました。
日置市に住むようになったのは、東京ビッグサイトでのJOIN移住・交流&地域おこしフェアに参加したことがきっかけ。そのとき、日置市から「うちに来ませんか」と逆プレゼンされました。
いちき串木野市に実家があるものの、隣の市とはいえ、美山は全く知らない場所。そこから、自治体のHPなどで調べはじめましたが、知りたい情報はあまり得られなかったですね。僕のように実家から遠くない場所だとしても、実際に移住となるとやはり不安なものです。たまたま美山でお店をしている友人に尋ねると「いま、美山ではいろんなことが動いている」という話になり、「おもしろそうだ」と決断しました。
日置市の地域おこし協力隊員の美山地区の観光振興担当として、2016年7月に着任しましたが、来てみると、むちゃくちゃ面白いまちでしたね。こんなにも歴史のある地域とは思わなかったですし、薩摩焼も奥が深い!美山に愛着を持っている人も多くて、会う人、会う人がまちの情報をくれるんです。どんどん美山に関する知識も思いも深まりました。そして、こんなにおもしろいまちを、もっと知ってもらう機会を作らないともったいない!と思いました。
積極的に地元の集まりに参加することではないでしょうか。僕の場合は着任してすぐに「美山の朝マルシェ」の運営を引き継いだので、そのことが、地元に溶け込むスピードを速めてくれたのかもしれません。出店者を集めるために多くの飲食店を訪ねたり、人気のあるマルシェを見に行っては、実行委員会に紹介するなど、そこに並ぶ商品をよくするための打ち合わせを重ねていくことで、ぐっと距離も縮まったと思います。
美山の竹林ロードの佇まいですね。地域の人と力を合わせて整備した竹林ですから、思い入れが強いということもありますが、特に「竹取食堂 休庵」の竹林の中のハンモックが僕は好きです。竹のしなる感じと、横になって、グンと伸びた竹と笹の葉越しの空を眺めていると、本当に気持ちいいですよ。ハンモックの揺れや風にカサカサと擦れ合う笹の葉音にも、なんとも癒やされますね。
任期中の3年間は、マルシェの運営に関する仕事が、とにかく忙しかったですね。おかげさまで、たくさんの⼈が美⼭に訪れる⼈気イベントとして定着させることができました。
古⺠家を改装した「美⼭笑点」を拠点に、地域の活性化のために、ミッションである美⼭のPRや特産品開発・販売、地域の整備など、さまざまなことに取り組んできました。
それと並⾏して、実は県内の各⾃治体に地域おこし協⼒隊員として移り住んだ⼈からの相談を受けることも多かったんです。若い⼈たちが、⼈⽣をかけてせっかく⿅児島に来てくれたというのに、任期の途中で辞めてしまう⼈も多くて、それが残念で…。中には⾃治体の受け⼊れ体制や、隊員の準備や覚悟不⾜みたいものありますが、僕が強く感じたことは⾏政と隊員のミスマッチ。ほかの町なら続けられたかもしれないと思うともったいないですよね。
こうした経験もあって、2019年7⽉、全国の隊員・自治体から相談を受けて、支援を行う地域おこし協力隊サポートデスク専⾨相談員に就任し、同⽉、「地域おこし協⼒隊サポーターズ⿅児島」を有志と結成しました。隊員の相談に乗り、⽀援することはこれまでと同じですが、⾏政の担当職員もメンバーに⼊っているので、受け⼊れ地域や団体に対して、任期や任務内容、そして受け⼊れ体制などの制度設計へもアドバイスができます。⼊り⼝はもとより、任期後の出⼝まで関わらせてもらうことで、⿅児島へ来てくれた⼈が定着できる⼿助けをしたいですね。
まずは関係性を最初に作ることでしょうか。⿅児島との接点を作るために、イベントがあれば積極的に出かけていき、知り合いや友⼈を作ってみてください。そのつながりの中で、地域を知り、仕事や住まいについて考えたり、アドバイスをもらうといいと思います。県内には「お試し暮らし」ができる⾃治体や、南九州移住ドラフト会議という移住⽀援もあります。そうした機会を使って⾃らきっかけを作ることをお勧めします。